現実のものとなりました

2015年11月25日

おもちゃのカンヅメ騒動


 あれは小学3年の、ちょうど今頃です。
 そろそろ正月気分も抜け、ふだんの生活が戻り始めていました。

 ピンポ~ンという玄関のチャイムに、母が応対しました。わたし宛に小荷物が届いたのです。
「何かしらね、あんたにだって」母がわたしに荷物を渡そうとすると、
 ちょっと待て、と父がそれを取りあげました。
「むやみに開けるんじゃない。柏傲灣呎價 時限爆弾かもしれないぞっ!」
 わたしたちはギョッとして、郵便物を手にした父から、ササーッと離れました。

 当時、無差別な爆弾魔が世間を恐怖に陥れていました。
 超小型の、けれども十分、殺傷能力があるプラスチック爆弾を、小包で送りつけ、不用意に開けると大爆発をする、というものでした。

「お父さん、早くどこかへ捨ててきてっ」わたしは懇願しました。
「明日は燃えないゴミの日だから、一緒に出しちゃったらダメかしら?」と母も心配そうに提案するのでした。
「ばかなことを言うんじゃない。清掃車が木っ端みじんに吹っ飛んだらどうすんだ。こういうときは、まず、警察に連絡だ。母さん、すぐに電話してくれ」

 ほどなく、ものものしいサイレンの音が近所中に響きわたり、皮秒去斑バタバタと警察官がやってきました。

「まずは、その小包を確認させていただけませんか?」年配の警官が尋ねました。「まんいち、ほんとうに危険なものと判断された場合、爆発物処理班の出動を要請することにします」
「あ、はい。どうぞ、調べてください。コタツの上に置いてあります。茶色い小包ですよ」父は台所から、居間の方を指で示しました。対象物を確認でき、なおかつ、もっとも遠く離れた場所が居間なのです。わたし達は、その父の背で二重の防壁を築き、丸く固まっているのでした。

「きっと、爆弾ですよ、おまわりさん。Pretty renew 旺角うちの子に荷物なんて届くわけがないんですからね。また、どこかで、いたずらかなんかやらかして、恨みに思って、仕返しに送ってきたのに違いない」母は怯えながらも、常日頃のわたしの行いをあまさず伝えました。

「わかりました。それじゃ、拝見しますから」警官は言い、コタツに向かうと、慎重に小包を手にしました。
 様々な角度から眺め、逆さまにし、振ってみたり、たっぷりと時間をかけて調べていました。

 やがて、にこやかに顔を向け、
「ご主人、これは爆弾じゃないですよ。うちにもお宅さんと同じくらいの息子がいましてね、こういうものが届いたことがあるんですが……ほら、ここ――」
 警官は、発送元の印刷されたラベルを指差しました。

 〈森永製菓?チョコボール、おもちゃのカンヅメ〉

「あっ……」わたしは何もかも思い出しました。去年の暮れ、銀のクチバシ5枚を送ったんだっけ。

 警察官は、恐縮しきった両親に見送られながら、
「いえいえ、これも任務ですから」と最後まで笑顔を絶やさず戻っていきました。もっとも、心中のことまではわかりません。
 それよりも、まもなく自分の身に降りかかるであろう災いこそ、容易に想像ができ、何より恐ろしいことでした。


「こらっ、ちょっとこっちに来い!」父の罵声が飛びます。
 おもちゃのカンヅメは、わたしにこそ「時限爆弾」だったのです。 

Posted by ずさ at 15:51Comments(0)